「本当に分かってるんだったら、早く行けよ、向こうに……」
「また、会える……?」
「彼女が出来たら連れて来るよ、自慢しに、じゃぁな」
背中を押し出すような言葉を口にし、谷口は軽く手を挙げて店へと向かって行く。
立ち去る姿を彼は黙って眺め、此方を見つめて優しく笑い掛けて来た。
その顔に急激に胸が痛み出し、張り裂けそうになるのを堪えて彼の背後を追う。
探偵の如く一定の距離を保って歩き進めた先の駐車場、周りを気にして乗り込む姿が少しだけ煩わしく思えた。
彼は黙ったままファミレスの一番目立たない角の敷地に車を停め、暫く辺りを見回した後で小さく呟く。
「茅紗……キス……していい?」
「……ここ、で……?」
「ごめん……変なこと言って……」
首を振って応える自分の手に躊躇いがちに震える指が落ち、そっと包むように握りながら彼は言った。
「少し、嫉妬してるかもしれない……俺……」
「……安田さん、が?」
言葉に詰まる自分に苦笑いを浮かべ、気弱な声が聞こえてくる。
「……おかしい?」
「ごめんなさい……そういう意味で言ったんじゃ……」
その手が脇を通り抜けて背中越しに肩を掴み、耳元には震える息が繰り返し落ちていた。



