彼は躊躇いがちに手を伸ばし、尚且つ戸惑い気味に身体を寄せ、包み込むように抱きしめた。
「嫌だったら、殴って」
「……出来るわけ……ないです……そんなこと……」
優しい温もりが纏う中で耳の近くから声が流れてくる。
「このままで聞いて貰っていい?」
「はい……」
深く吐き出した息が震えていた。
「俺が居ない時は誰か来ても絶対に出なくていいから
朝は大丈夫だと思うけど、夜は俺と一緒に帰って、なるべく合わせるようにする
それと、暫くは一人の外出も我慢して貰う事になると思う、あと……キスしていい?」
不意に身体が離れて急に見つめられ、右往左往しながら迷って答える。
「それは……少し、早いような……」
すると彼は罰の悪そうな顔をし、その表情に胸を撫で下ろした瞬間。
柔らかさも感じる間も無く、瞬く間に触れただけでキスが終わっていた。
「ごめん、抱きしめたら抑えられなくなって……」
その言葉と尚も自分に触れたそうに躊躇う手を眺め、ポケットからハンドクリームを出し、ささくれた指先に塗りながら自然に言葉が落ちる。
「ありがとうございます……気を遣って貰って……」



