気まずいよりは気恥ずかしい雰囲気に包まれ、お互いに困った顔を目にしながら逃げもしないまま、先に口を開いたのは彼の方だった。
「本当にごめん……何か、抱きしめてあげたくなって……」
一瞬で胸が跳ねるものの気持ちは追いつかず、口から出たのは思いもしない言葉。
「……それは、吊橋効果だと……思います……」
既に彼は罰の悪そうな顔はしてなかった。
「……手塚さんの言う通りかもしれない……」
自分の言葉を噛み砕くように頷き、此方に押し付けないように返してくる。
「かも……じゃなくて……そうです……」
躊躇った切り取り線のような言葉に彼は否定もせずに重ねた。
「多分、それでも……俺は手塚さんを好きになる、と思う……」
たった一つの言語に鼓動は高鳴り、自身の想いと向き合う姿に胸が締め付けられる。
「思うだけでも、困ります……
安田さんには……迷惑掛けられないです……」
ふと目線を落とすと、ささくれた親指が人差し指の腹を弾き、秒針を刻むような音に耳を傾けると彼は優しく語り掛けて来た。
「そんな風に思ったことないし、迷惑掛けてるのは俺の方だから……
多分、これから巻き込む事も分かってる……でも今、君を抱きしめたいと思ってる」



