「ごめん、嫌な聞き方して、手塚さんを責めてる訳じゃないから……」
「いえ……私の方こそ食い下がるような言い方で……ごめんなさい……」
再び彼は軽く首を振って黙り込み、見るからに肩を落として指に挟んだ煙草を眺めていた。
その様子に肝心な事を引き出して取り出すのを繰り返し、口を開いたり閉じたりして悩む横に携帯が差し出される。
「連絡先、交換して置かないと何か遭った時に不便だから……」
ポケットから携帯を取り出して寄せると彼は少しだけ笑って続けた。
「随分、古い携帯使ってるね……俺も似たようなもんだけど」
互いの手にした携帯に入ってる罅割れ、鏡合わせの翼が羽根を広げたように映り込む。
何気ない言葉と似ている持ち物、僅かに縮んだ距離に漸く口が開き出す。
「あの……怒らないで、聞いて貰えますか……」
「あ、うん、ごめん……なに?」
気が緩んだのか彼は煙草に火を点け、慌てて消そうとしていた。
「煙草は……吸ってても、別に気にしないので……」
「ごめん、落ち着かなくて……」
苦笑いで返す彼に首を振って見せ、思い出すようにして言葉を吐き出す。
「昨日……部屋に入った時も、さっきも……
車に乗った時も……薔薇の香りが、少しだけ、しました……」



