トワイライト(上)


それきり口を噤んだままコンビニに車を停め、示し合わせたように車内を抜け出すと彼が此方に近付いて呟いた。


「店の中に入ってて、俺の事は気にしなくていいから」


その言葉に後ろ髪を引かれながら店の中へ足を運び、雑誌を眺める振りをして駐車場を覗き込む。

怪訝な顔を浮かべて彼はトランクを開き、一歩身を引いて立ち尽くしていた。

何度か肩で大きく呼吸をした後で何かを手にして静かにトランクを閉め、視線を此方に投げて彼は小さく頷いて見せる。

乗り込んだ車内は気まずい空気だけが漂い、互いに何かを口にしようと言葉を探し続けていた。

けれど、心配することも出来ずに気遣うばかりで黙り込み、声を掛け合わずにマンションを通り抜けて部屋へと進む。

どちらともなくソファーに腰を下ろし、そこで彼は漸く気が抜けたように長い息を吐いて言った。

「何から何まで迷惑掛けてごめんね……少し、質問してもいい?」

「はい……私の方こそ役に立てなくて……済みません……」


彼は軽く首を振って答え、煙草を手にして静かに問い掛けてくる。


「昨日、変わったこと無かった?誰かを見たとか……」

「いえ……変わった所もないし……誰も見てません……」

「そっか……何も無いならいいけど……」


怪訝な顔に混じる嫌悪感を浮かべたような表情に肝心な事も他所に慌てて取り繕う。


「あ、の……そもそも私は間違えて引越しただけで
 通う美容室だって、違うし、安田さんの事は何も……知りません……」