樹なのに。

樹のくせに。

ただの樹でしかないのに。


初めて見せる樹の表情や言葉に、ドキドキしっぱなしの自分がいる。


手のひらには滲む汗、いやと言うほど高鳴る鼓動。

まるで…自分が自分じゃないみたい。



「…だから、あんま俺を煽んな」


耳元で囁くと、樹はゆっくりとあたしから体を離した。


そして、押し倒された拍子に落ちたタオルをあたしの肩にそっとかける。