漆黒の鏡 記憶のかけら

「見失いそう・・・・自分を・・・・」




朱笆さんの言った言葉を繰り返すように口に出す。



「少し言い過ぎた感じですかね」




「・・・・」



何も言える言葉が出ない。



出ないというよりは出てこない。



多分、朱笆さんが言うとおりだからだ。




「でも本当に、君の事がすごく心配なんです」



(心配・・・・)



「そんなつらい顔しないでください。
まあ、僕がそうさせちゃったんですけど」



わかってる。



わかってるけど・・・・けど。




「少し怖がらせてしまいましたね、ごめんなさい」



朱笆さんは申し訳さそうに頭を下げる。



朱笆さんのせいではない。



不意を付かれたとかそんな事でもない。



わかってるはずだったんだ。



でも、気持ちが心が追いつかない・・・・。



心が追いつかない感情に、私は些細な声で朱笆さんに尋ねる。



「・・・・どうすればいいんですかね?」



「・・・・」



すると、ふわっと微笑みを向けられ。



「そうですね、自ら話しをすればいいと思いますよ?」



「え・・・・」



(話し?)



そんな方法で、簡単に変わるものなのだろうか。



疑問が沸く感情に続けて朱笆さんを見続ける。



「今、僕と話している感じで構わないんです。
きっかけとか、そういうのこだわらず、゛人と話す゛という感情を持てばいいと思います。君は少しずつ変わっていこうとしているはずです。
だから、人に興味を持つべきなんだと思いますよ」



「人に興味・・・・」



それは、私にとっては、とても難しい言葉だ。



でも、朱笆さんの言う通り人と接していけば、変われる自分がいる気がする。



熱を出して、人は温かいものなんだと知った。



もし、それで・・・・・・・・。




「そしたら、自分を見失わず済みますか?」



哀しさだけど強い眼差しで、私は朱笆さんに尋ねた。



私の気持ちに答えてくれるように「ええ、大丈夫ですよ」と答えてくれた。



「・・・・・・・・大丈夫」



「まあ、難しいですからね、人と接するというのは本当に」



最後に朱笆さんは、付け加えるかのようにそう添えた。