漆黒の鏡 記憶のかけら

「とりあえず、自己紹介しておこうか」



グレーの髪の男の人が突然そう言ってきた。




こんな状況で自己紹介など、呑気なものだと第三者の目からするとそう思われるけど、これも何かの縁だろうし、とりあえず名前ぐらいは知っておいて損はないだろうと、それぞれ自己紹介する事になった。




「俺は紫衣羅〈しいら〉」




先程と同じようにグレーの髪の人から挨拶をする。



「俺は碧斗〈あおと〉。可愛い子なら大歓迎だよ?」



次にかわいい顔のした男の子が挨拶をする。



最後の方、よく分からない言葉が発されたけど、気にしない方がいいのだろうか。




「彼の事は気にしないでくださいね。
僕は朱笆〈あかは〉と言います
よろしくお願いします」




そんな事を考えていると、綺麗な顔立ちの男の人が丁寧に自己紹介をする。



「で、こいつがーー」




紫衣羅さんが派手な赤髪の人に対して、親指を向けると、彼はぼそっと少し不機嫌そうに言う。



「恣枦華〈しろか〉」






「で、君は?
名前はさすがに覚えているよね・・・・?」




紫衣羅さんはこれまでの私の状況に、さすがに心配になったのか、尋ね方が少しよそよそしさがある。



「えっ・・・・と」



(名前・・・・名前・・・・・・・・)



私も少し心配なったけど、一応記憶を思い出そうとする。




「沙紅芦〈ざくろ〉・・・・・・・・」




気がつくと、私はそう口にしていた。




「沙紅芦?それが君の名前?」




私の口にした名前に紫衣羅さんは確認するように、もう一度聞きに入る。



「・・・・・・・・あ、はい!そうです!」



(そうだ、私の名前は沙紅芦だ)




なぜ記憶を失っているのかは全くわからないが、先程までは自分の名前にも自信がなかったものの、名前だけはちゃんと確信があったのだった。