それから、碧斗くんは先ほどの明るめの声から、少しトーンを落とした低めの声で話し始めた。




「俺には小さい頃から一緒にいた一つ年下の女の子の幼なじみがいたんだ」



「幼なじみ?」


「うん、活発で元気で少し男勝りな女の子で少し君と似てるかな」


「似てる?」


「顔だけね。あとは全然だよ」


「そう・・・・」


(似てる?)



その時、碧斗くんと幼なじみの女の子と似てるということに、妙な違和感というものに駆られた。



見てもなく知らないのに、なぜかそんな感情になったのだった。


(なんでだろう?)


「その子は架乃亜〈かのあ〉って言ってね。俺はその子の事が大好きだったんだ。すごくすごくね」


「・・・・・・・・」


「大好き」という言葉に碧斗くんの強い意志を感じた気がした。


「でもね、その感情に俺は消したんだ。鍵をかけて」


「えっ?」


碧斗くんは不思議な言葉を発した。


「思い出したくなかったから、思い出すと後悔するから。嫌だったんだ・・・だから、そう思うようにしたんだ」


「碧斗くん・・・・・?」


正直、何を言っているのか分からなかった。


でも、すぐに碧斗くんが言っている言葉に理解することになる。


「俺が高1の時、その子は突然俺の前からいなくなったんだ」


「いなくなった?」


碧斗くんの声はどんどん深く深く暗くなっていた。



私は嫌な事を予想した。


でも、その考えは当たってしまった。


「うん、死んじゃったんだ」


「えっ?」


碧斗くんはあくまでも声のトーンを変える事なく同じ低いトーンで軽く言ったのだった。


「死んじゃったんだよね・・・・自ら」


「自ら?」


それって、もしかして・・・・もしかしなくても・・・・・・。


「そう、自殺しちゃったんだよ。学校の屋上から飛び降りてね、裏庭で死んじゃってたんだよ」


「えっ・・・・・」


低いトーンで軽く言っているようだけど、それは軽いもので片付けられるものではないと思う。