「でも、私は何も言えないよ?」


「別にいいよ。別に何か言ってほしい訳じゃないから」


「そう・・・・」


何か言ってほしい訳ではないのに、私にきいてほしいなんて、きっと碧斗くんは誰かに心につもってる思いを聞いてほしいだけなのかもしれない。



でも、その役目は本当に私でいいのだろうか?


紫衣羅くんの方が適正な気もするけど。


「ねえ、碧斗くん」


「ん?」


「本当に私でいいの?紫衣羅くんの方がいいんじゃないのかな?」


「あー確かにね。でも、紫衣羅は色々言うからな~。それに、あいつは感が鋭いからね。俺は紫衣羅より沙紅芦ちゃんに聞いて貰う方がいいな」


「碧斗くん・・・・」



それって要するに、私ぐらいがちょうどいいって事だろうか?



「うん?」



「それは、私がいいの?」



「うん!」


「・・・・・・」


その時向けられた碧斗くんの表情はとても嬉しそうな顔だった。


「そっか、わかった」



きっと何度も疑問を向けたら嫌になるかもだから、これ以上は言わないで受け止めた方がいいのかもしれない。


「ありがとう、沙紅芦ちゃん♪」


「っ・・・あ、碧斗くん!」



そう言うとなぜか抱き付いてきた。


なぜ、碧斗くんはいつも抱き付いてくるのだろうか?



距離が近いのも分からないし、すぐ抱き付いてくるのも、本当によくわからない。



(なぜなんだろう?)