漆黒の鏡 記憶のかけら

紫衣羅くんはそっと私に歩み寄り、資料室の扉付近の壁に背をもたれる。


「人に興味を持つことはすごく良い事だよ。それが人の本来の心なのかもね」


と、紫衣羅くんは目をそむけながら「でも、まあ。俺が言っても説得力はないけど」とまた否定的な文章を述べる。



先程も言った否定的な言葉。


その前からも時々言ったりしている。



その事について「どうして?」と聞いたら、「どうしても」とやや強めに言い切られたので、それ以上は聞いたりはしなかった。



「大丈夫だよ。ここにいる人達はみんな良い人ばかりだから。まあ、あのうさぎは違うから、俺にとっては少し戸惑いを持ってしまうけどね」



そう言いながら私の頭を撫でる。



「ほら、行っておいで、探してるんでしょ」



「・・・うん」


促すように言い、資料室の片扉を開けてくれて、そっと扉を通り、資料室の外の廊下に出る。



「俺もさ、あいつがあんな調子だと困るんだよ」



「・・・・・・・・」


その言葉に紫衣羅くんの方を向けると、彼は少し心配するような表情を向けていた。



「だから、お願いね」



「・・・・・・・・うん」



そこまで碧斗くんの事心配してあげてるのなら、紫衣羅くんも一緒に来たらいいんじゃないかと思うけど、接するのなら私の方がいいんだろう。


なぜか分からないけど。



「大丈夫だよ。自分の気持ちに嘘を付かないで言えば大丈夫だよ。君は本当は素直でいい子だから」


そう言い残し、資料室の扉を閉めたのだった。



゛素直でいい子゛か。



本当に私はそうなのだろうかは、不明だが。


まだ自分記憶全く戻っていないというのに。