漆黒の鏡 記憶のかけら

昨日と同じように倉庫の前に連れてきてもらい、淡々とやり方を説明してくれる。




「やり方は簡単。階段を上がった所に置き、手を合わせて祈る。これだけよ、わかった?」



「は、はい・・・・」




うやむやな感情がまだ出ているせいか、お姉さんの説明にぎこちない返事をする。




「どうしたの?」



「いえ、別に・・・・」




まだうやむやでいるのは事実だ。




そんな感情に気付いたお姉さんは、私に優しい気遣いの言葉を掛けてくれる。




「別にやらないという方法も1つの方法だけどね」



「・・・・・・・・」



やらない?確かにそれも1つの手のかもしれない。



「あら?」



「?」




ふいにお姉さんは、何かに気付き倉庫に付いている階段を登り戸に手を当てる。




「!? 開いてる」



「えっ」



戸に手をかけると、開いているはずのない戸が開いていたらしい。




「今日は開いているのね。めずらしい、こんな早くに開いているなんて」



戸が開いている事がそんなにめずらしい事なのか、お姉さんは少し驚いた表情をみせている。




「開いている日って決まっているんですか?」



「ええ、1年に数回しか開かないから。1年に1回というのもあるぐらいなのに、こんな早くに開くなんて」



「・・・・この前はいつ開いたんですか?」



「つい最近の9月のお月見の日かしらね」



(お月見?)



もしかして、開く日にも意味があるというのだろうか?



話しを聞いていてふとそんな事を考えた。



(やっぱり、そうなんだ)




「うさぎの神様が大事だと思う日しか開いてないのよ。お月見は毎年開いていて、あとはお正月とかここの設立日とかね。だから何もない日に開いているのはすごく変なのよ」



お姉さんは少し怪訝そうな表情を浮かべ首を傾げる。



「まあ、いいわ。中、見てみる?」



「えっいいんですか?」



「ええ。どういう理由で開いているかわからないけど、ちょうどいいしね。こんな機会めったにないから特別にね。あなた、運はいいわね」



「あ、ありがとうございます」



「いいのよ。さあ、どうぞ」



そう言って、お姉さんは戸に手を掛けて、キィと鈍い音を出しながら静かに開けると、中へ促してくれる。