一か月後に世界が終わるという時に ゲーム仲間とオフ会する話

 それから園内の色々なアトラクションを楽しんだり、写真を撮りまくったりしているうちに閉園アナウンスが流れた。夏場にしては早い、16時閉園だった。

 それでも厚意でこの遊園地は昼間解放されている。少ないクルーで見回り点検をするのだろうから、閉園時間を早めるのは当然だろう。

 エントランスへ向かう途中、男性クルーの一人が「すいません!」と走って来て、サインをもらえないかと頼まれた。

 あと一ヶ月で世界が終わるというのに、それでもいいのだろうかなんて疑問が一瞬浮かぶが、無粋だとすぐにその考えをかき消す。


「いいですよ。でも、ペンが……」

「ありがとうございます! 自分、ペン持ってます。じゃあ、これに……」


 同い年くらいだろうか。

 彼が俺に渡したのは、透明のケースがつけられたスマホだった。

 ペンを受け取り、名前を訊く。彼はリュウジですと名乗った。

 宛名を入れてから、黒い油性ペンを慣れた手つきで滑らせ、ケースいっぱいにサインを書いた。

 書き終わり、ペンを添えてスマホを返すと、クルーの青年は泣いていた。

 ズッと音をたて鼻をすすり、ありがとうございますと言って彼がそれを受け取る。


「もうすぐ地球終わるって言われて、何しても……無意味だって、誰かに何かを遺してもそれごと全部意味なくなるんだって……正直何したらいいかわかんなくて、頭真っ白なまま今日も自分、ここに居るんです」


 スマホを持つ両手がぶるぶると震えていた。


「自分、マジでファンなんですよ……今日、出勤してて……良かったです」