「いや……何というか、はぁ……びっくりしたよ」
「すいませんでした。田舎住みのJKじゃなくて」
「お、おう。BQさんが田舎住みのJKじゃないどころか、女の子じゃないって事もフォロワーのみんな知ってると思うよ?」
「ふふ、サツサトさん、僕の事どういう人物だと思ってました?」
「20代前半の社畜」
「社畜ってのはある意味合ってますね」
「性別はまあ、俺達ゲームやる時に通話してるじゃない」
そういえばそうでしたねと、すっとぼけておく。一昨日もボイスチャットでギャーギャー騒ぎながらゲームをしていた。
窓の外を眺める。さっきまではビルに囲まれた道を走っていたのに、今は右を見ても左を見ても海だった。そうして目的の遊園地が、橋を渡った向こうにうっすらと見えてくる。
「というか今日、人混み行って大丈夫なの?」
「この間から何回か今日みたいなカッコで街中歩いてるんですけど、ちょくちょくバレるもののまあ平気ですよ。前より他人に無関心になった人が増えたっていうか」
「ああ、まあ仕方ないよね」
遊園地かぁ。撮影以外で来るの、いつぶりだろう。
そうそう、戦いが始まる前にステージをちょうどこんな感じの角度から眺めるんだよな。
「窓、開けていいですか。写真撮りたいです」
「いいよー。あとで送って」
スマホで何枚か写真を撮って、そのまますぐサツサトさんに画像を送った。後部座席の荷物から短く通知音が鳴る。
「茶瓶虫さんも来られたら良かったのに」
「そうだね」
彼もゲーム仲間で、今日の聖地巡礼に誘っていた。
2週間前に「みんなありがとう、楽しかった」とSNSに書き込んだきりメッセージにも反応がなく、誘いのDMに既読が付く事もなかった。
--------------------

