一か月後に世界が終わるという時に ゲーム仲間とオフ会する話

「この暑さでマスクは地獄でしょ。外しな外しな」


 そう言いながらサツサトさんは、車に乗り込んで後部座席にラムネ菓子入りの袋を放り投げる。

 それからゆっくりと駐車場を出た後、信号待ちでチラリと横目で俺の顔を確認し、「うっ」と悲鳴のような声をあげて彼が凍りついた。


「う……あ、あのさ……BQさん、俳優の柿由 夕陽、くん……に似てるって言われない?」

「はは、言われませんね。本人ですし」

「だよね」


 サツサトさんが深く息を吐く。

 信号が青になった。右折して、片側一車線の国道に入る。


「何回オフに誘っても来られないわけだ」

「でもほら、今日から解禁しました」

「BQさんも、夏休みってことか」

「ええ」


 サツサトさんとはゲーム仲間。

 今日これから向かう遊園地は、よく一緒に遊んでいる6人対6人の対戦ゲームに出てくるステージのひとつ。世界が終わる1ヶ月前、俺は“聖地巡礼”に向かっていた。