【side 海】
由姫に言われた言葉が、頭から離れない。
「まるで私のこと、監視してる、みたい……私を通して、誰か違う人を見てるように感じるの」
「……っ」
それは、紛れもない事実だったから。
「そのサラって人のことが知りたいから、私と仲良くしてくれてるの?」
俺はその質問に、何も言えなかった。
由姫がサラのことを知っているんじゃないかと気づいた日から、俺は注意深く由姫を見るようになった。
それこそ、まるで監視するように見ていたと思う。
気づかれていたのか……まあ、由姫は得体がしれないから、そのこと自体には驚きはしなかったけど……。
ただ、図星をつかれたことに驚いた。
そうだ、俺は由姫ではなく……由姫からちらつく、サラの影を追っていた。
由姫のことを……由姫自身のことを、ちゃんと見ていなかった。
由姫は……一体どんな気分だったんだろう。
こんな俺と一緒にいるのは……さぞ居心地が悪かっただろ。気持ちも悪かっただろう。
それなのに、何も言わず、笑顔を絶やさず、いつだって俺にも優しく接してくれた。
勘付かれていることに、俺が全く気づかないほど……由姫といるのは居心地がよかった。