【side 春季】
屋上で会った日を最後に、由姫には会えていない。
由姫はこんなに近くにいるのに……会えないなんて、一体なんの拷問なんだ。いや……ただの自業自得だ。
『脅しみたいだよ……春ちゃん』
屋上であの言葉を言われた時、恐ろしくて足元がすくんだ。
卑怯な手は、由姫には通用しない。むしろ、嫌われてしまうだけだ。
由姫に嫌われるなんて……死んでも嫌なのに。
由姫にだけ好かれればいい。そう思っている俺にとって、由姫の言葉は俺の行動を制御した。
気軽に会いには行けない。連絡だって……俺からしたら、嫌われるかもしれない。
今の俺にできるのは……強くなること。
そして……由姫に好きになってもらえるような男になること。
fatalの頭として……総長としての務めを果たすこと。
俺がひとり、由姫の理想に近づくため動いている中、事件が起きた。
夏目が——サラと遭遇したと聞いて、最悪だと頭を抱えたくなった。