……って、まさか……。

 嫌な予感がして、足を止めた。喜びを噛みしめている天王寺を見て、嫌な予感は確信に変わる。


 ……電話の相手は由姫か。


 ああもう……舜くんが退学処分なんて怖い単語を出したから、由姫が動いちゃったじゃないか……。はー……どうしてみんな、僕と由姫の邪魔ばっかりするんだろう。

 再び歩みを進め、天王寺に近づく。

 向こうも僕に気づいたのか、目が合った。

 僕を見るなり、無関心そうに視線を移した天王寺。そのまま、去っていくつもりなのか僕に背を向けた。

 たぶん由姫が、ケンカはやめてとでも言ったんだろうなぁ……誰も手に負えない狂犬でも、サラの言うことには従順みたいだ。



「あれ、どうしたの~? 僕が来たから逃げるの?」

「……」

「ほら、もっとケンカしようよ。暴れ足りないんじゃない?」



 いつもなら、煽ればバカみたいに乗ってくる天王寺。