「由姫、もう隠れなくていいぞ」
「あ……は、はい!」
蓮さんが呼びに来てくれて、寝室から出る。
蓮さんの前では……無関係なふりをしよう。
心が……痛むけれど……。
「もう舜先輩、いなさそうですね……」
玄関から廊下を覗いて、誰もいないことを確認する。
隠れた手前、蓮さんの部屋から出ていくのを見られたら困るからっ……。
「それじゃあ私、部屋に戻ります! 朝ごはん作るので、支度が終わったら蓮さんも来てくださいね」
笑顔で告げると、蓮さんも微笑み返してくれた。
「ん。楽しみにしてる」
蓮さんの部屋を出て、自分の部屋へ戻った。
虫は……もういない。一応確認して、安堵の息を吐く。