「おやすみ」 半ば押し付けるように寝室から出て行こうとした時だった。 また、きゅっと服の袖を掴まれた。 「……ん?どうした?」 振り返ると、由姫がさっきも見た不安げな表情を浮かべている。 「あの、もう少しだけ一緒にいてもいいですか……?」 よほど虫が怖かったのか、由姫の瞳にはまだ怯えが見えた。 軽々と男たちを倒した、あの日の由姫を思い出す。 あんなに強いのに、蛾ひとつに怯える姿がかわいそうだがかわいく見えて仕方なかった。 「一緒に寝るか?」 とっさに、そんな言葉を口に出していた。