浮気をしているってことは、春ちゃんはもう私への気持ちは薄れたんだと思っていたから……ここまで必死に引き止められると、思っていなかったんだ。
春ちゃんが今までくれていた言葉に嘘はなかったのだとしたら、それはもちろん嬉しい。
でも……もう決めたことだから。
私は、そっとスマホを閉じた。
あっ、そういえば洗濯物干しっぱなしだった。
いけないいけない……と思い、ベランダに出る。
その時、だった。
「きゃっ……!」
電気の明かりに寄せられてか、蛾が飛んできた。
虫が大の苦手な私。恐怖で体が動かず、蛾を見つめたまま固まる。
そして……。
「っ、きゃぁーー!!」
なんと、その蛾が窓から家に入っていった。