俺の目の前にいた男が吹き飛んだ。

 いや……正確には、吹き飛ばされた。

 突如現れた、由姫によって。

 幻覚かと思い、自分の目をこする。

 今……由姫がこいつを蹴り飛ばしたのか?

 由姫は、ナイフを持っていた男の腕を掴み、そいつの首を強く握った。

 意識を失ったのか、がっくりと動かなくなった男。

 安心したようにほっと息を吐いた由姫の姿に、俺は目を見開いた。

 俺は“また”——助けられたのか。







 サラと出会ったあの日。俺は……突っ走りすぎていた。


 とにかくbiteを潰さなければ。そう思って、まだ大して力もないくせに、最前に立って戦った。

 あれだけnobleが惨敗していたのは……ある種俺のせいでもあったんだ。

 弱い俺をかばうように、先輩たちを戦わせてしまったから……主力メンバーが早々に落ちた。