蓮さんは私たちを見て一瞬目を見開いたあと、感情の読めない表情に変わった。

 そのまま私たちに背を向け、来た道を戻ってしまった蓮さん。

 ……今の、誤解されたかな……。

 また、しがらみが深まってしまった……。

 蓮さんには春ちゃんと別れたことは伝えたから、きっと軽い女だと思われたに違いない。

 屋上でこそこそ会うような真似なんかして……言い訳も思いつかなかった。



「由姫は、あいつのことが好きなの?」

「っ、え?」



 何を思ったのか、春ちゃんの言葉に驚いて顔を上げる。

 好きって……それはもちろん……。

 いや、この場合の好きは、きっと恋愛感情的な意味でってことだよね。

 なぜか、返事が思い浮かばなかった。