「……っ。ううん、変なこと聞いてごめん」



 笑顔を浮かべているけど、全然笑えていない。

 ごめんね……。


「でも、これだけは覚えてて」

「え?」

「由姫の居場所は……fatalに残ってるから」



 春ちゃんは、まっすぐに私の目を見つめながら、掴んでいる手に力を込めた。



「みんな、待ってるから」



 そ、そんなふうには見えなかったけど……言葉はありがたい。



「ありがとう」



 口元を緩め、笑顔を返した時だった。

 階段の下から足音が聞こえ、視線を向ける。

 現れたのは……。


「あっ……」



 ……う、嘘……。



「れん、さん……」



 春ちゃんに掴まれていた手を、慌てて離す。




*次回の更新5月7日(木)13:00〜*