「じゃあ、もう遠慮する必要はないな」

「へっ……」



 遠慮……?

 首をかしげると、蓮さんが急に顔を耳元に近づけてきた。

 耳に唇が触れるんじゃないかと思うような至近距離に、ドキッとする。



「落とすから覚悟しとけ」

「……~っ」



 言われた意味くらい、さすがにわかった。

 蓮さんから慌てて離れて、耳を押さえる。

 な、何、今の色気のありすぎる声っ! 蓮さん、怖いっ……!

 今、変装していることに感謝した。

 私の顔は、きっとユデダコみたいになっているだろうから。メガネがあるから、まだ隠れるだろうけど……。

 それでも蓮さんも気づいたのか、また不敵な笑みを浮かべた。



「顔が赤いぞ。好きになったか?」



 ブンブンと、首を横に振る。