「今の春ちゃんは私が好きになった春ちゃんじゃない」



 春ちゃんが、苦しそうに眉間にシワを寄せ、涙をこらえるように下唇を噛みしめた。



「優しくて、正義感が強くて、みんなを守ってた真面目な春ちゃんに戻ってほしいよ」



 どうか……昔の、かっこいい春ちゃんに。



「ゆき……っ」



 震える声で、呼ばれた名前。

 それに、笑顔を返す。



「あんまり人に迷惑をかけちゃダメだよ。春ちゃんはfatalのトップなんだから、みんなをしっかりまとめて守ってあげなきゃ」



 年下の子に偉そうにしちゃダメだよ? 春ちゃんが守ってあげる立場なんだからね。

 弥生くんと華生くんのことも、守ってあげてね。優しくしてあげてね。

 ふゆくんのこと……困らせちゃダメだよ。


 それと……。



「遠距離で、寂しい思いばっかりさせてごめんね。私がもっと、会いにこればよかった」



 ずっと、それだけは謝りたかった。