至近距離で、玲夜くんと目が合う。

ドギマギする私を見て、彼は

「浮気じゃないなら、今からデートに行こう?」

ニコニコと、先ほどのため息なんて嘘みたいにそう提案してきた。

「…うん、いいよ」

何か言われるんじゃないかと思っていた私は少し拍子抜け。

それでも、放課後デートに憧れていた私は少し楽しみ。

「あ、でも少し待ってて、電話しないといけないから」


そう言ってスマホ片手に足早に去っていった彼に、「何の電話?」とは、何だか聞けなかった。

すぐに戻って来た玲夜くんと手を繋いで、 

最寄りの駅から電車に乗って、近くのショッピングモールに着いた。 

もう空は夕焼け色で、心配するだろうからお母さんにメールは入れておいた。

2人で話しながらブラブラしてみたり、

お腹が空いたからファストフードでご飯食べてみたり。

そうして過ごしていると、不意に

「未風くん?」

と、綺麗な女の人の声がした。

それに反射的に振り返った玲夜くんは、 

「先輩、今日休みなんですか?」

と、人懐っこい笑顔で応じる。

暫く世間話をする2人を前に、なんだか独りの私。

…、私がいるのに、他の女の人と話さないでよ。

モヤモヤがどんどん大きくなってきて、どうしようかと思い始めたとき、2人の会話は終わったらしい。

「じゃあね、未風くん」

「はい、またバイトで」

そう言って手を振る2人はすごくお似合いで、自分が惨めになってきた。

玲夜くんが、こちらに視線を向ける。

どう考えても不貞腐れてる私を見て、彼は嬉しそうに、ふふっと笑った。

…それに、なんだかカチンときて、

「…私は他の男子と話したら浮気なのにね?」

と嫌味っぽく言うと、尚も嬉しそうな表情のまま、

「莉都ちゃん、妬いたんだ?」

と、そんなことを言ってくる。

それに何も言えなくなって、顔が熱くなってきて、

「…そうだよ、妬いたの。」

白状すれば、玲夜くんも少し照れたような顔になって、

「…あー、本当莉都ちゃん可愛い、食べちゃいたいよ」

何か、小さい声でボソッと言ったから、少し聞き取れなくて、「ん?」と聞き返すと、

「ふふ、僕にとって莉都ちゃん以外の女の人なんて存在してないようなものだけど」

「君が妬いちゃうなら話さないようにするね?」

まさに、王子様。

その言葉が似合うほど彼は美しく笑って、それから、こう言った。


「…だから、莉都ちゃんも他の男子と話しちゃ、だめだよ?」

まるで、交換条件だというかのように言われたそれに、頷くしか方法は無くて。


馬鹿な私は、やっぱり気付けない。