王子様の歪な病み愛


次の日。

いつもどおりに家を出て、もちろん彼は待っててくれている。

私に気づいた彼は心配そうに駆け寄ってきて、

「莉都ちゃん、昨日大丈夫だった?先に帰ってたし、メールも返ってこないから心配した」

そうやって見つめてくる彼に、軽く笑って見せて、

「ごめんね、体調が悪かったんだ。」


そう言うと、彼はさらに心配そうな表情を深めて、

「気づいてあげられなくてごめん」

そんなふうに気遣ってくるから、余計に辛かった。

…、なんで、優しくしてくるんだろう。



学校に着いて、お互いの教室に別れる、というときに私は彼に言った。


「…今日の放課後、時間ある?話したいことがあるの。」

そう言うと彼は少し固まって、でもすぐに元の表情に戻って、

「うん、大丈夫だよ。」

そう微笑んでくれた。



放課後になった。


彼と空き教室まで行って、

さぁ、別れを告げよう、というときに、


彼は、少し声を震わせながら、

「…今から話すのって、まさか別れ話じゃないよね?」

そんなことを言う彼に、思わず


「別れ話に決まってるじゃん」


そう、零してしまった。


刹那、彼は鋭い眼光で私を睨みつけてきて、

「…なんで?僕の愛が足りてなかった?」

物凄い威圧感で言うから怯んでしまいそうだけれど、そんなの気にしない。

「…だって、私は玲夜くんにとって無駄な存在なんでしょ?」

「弄ばれるのは、もう懲り懲り」


そう言った瞬間、


「…きゃッ」



彼は力強く私の腕を引っ張って、

まるで逃さない、とでもいうように、私を彼の腕の中に閉じ込めた。

玲夜くんの甘い匂いに酔ってしまいそうなほど、彼は私を抱きしめてくる。


「…もう、このまま莉都ちゃんが僕の腕の中で窒息死しちゃえばいいのに」


聞いたことない低音の声で
とんでもなく物騒なことを囁いた彼は、

そのまま私の顔を彼の方に向けて、


「なんで本命の女の子を弄ばなきゃいけないの?こんなに好きなのに伝わんないなら、」



    僕、生きてる意味ないや。



そんなこと言ってくるから私は慌てて、
 
「だって、昨日玲夜くん、他の男の子に私は可愛くないって、無駄だって、話してたじゃん!」


その私の言葉に、彼は表情1つ変えずに、
「あぁ、あれか」

というと、 

とんでもなく妖艶な笑みを浮かべて、

「当たり前でしょ。なんで他の男に莉都ちゃんの可愛さ伝えなきゃいけないわけ?」

「あーもうあいつら本当に殺そうかと思った、僕の莉都ちゃんのことそんな目で見んなよってね」


そう言ったあとに、


ふふ、と可憐に微笑んだ玲夜くん。


そんなことだったの?とポカーンとする私を見て、
彼は口角を妖しくあげて、



「あ、それとも他の男に目移りした?」

「残念だけど、僕の心は狭いからそんなの許さないよ」


紅い舌をペロリとしたあと、ニヤリと不敵に笑って、


   
      一生、逃さないから



それから、
熱い、甘ったるい、キスを何度も何度もされて、もう何も考えられなくなって、


この王子様の毒に、侵されてしまったんだって、気づいたときにはもう遅くて。


「お試しって言葉に流された莉都ちゃん、本当可愛いよね」

「僕がどれだけ君を好きなのか、知らないんだろうなぁ」

「馬鹿な、可愛い莉都ちゃん」


もう、前から仕組まれていたらしい。


私と玲夜くんが出逢ったことも、

玲夜くんが私に告白したことも、


私が、玲夜くんを好きになったことも…。