王子様の歪な病み愛


『僕の前以外でメイクしたらだめ』


そう言う彼の愛の重さに気がついて、少し彼が怖かったけどメイクして良かったなって、

そう思っていたのに…。


やっぱり、彼を好きになったらだめだったんだ。 


放課後、いつもより私のクラスは早く終わったから、一緒に帰るために彼の教室に行った。

聞こえてきたのは、数人の男子の会話。

「なぁ未風、今日のお前の彼女、超可愛かったくない?」

「本当本当!相沢さん可愛かったー」


数人の男子の中に、玲夜くんもいるみたいで。

なんとなんとこんな私如きのことを可愛いって、話してくれてる。

もしかしたら、このまま聞き続けたら、玲夜くんも優しさで可愛いって話してくれるかも。

そんな期待から、話を盗み聞いていると、聞こえてきたのは、


衝撃的な、彼の言葉だった。


「莉都ちゃんなんて、全然可愛くないじゃん。そんな無駄な話しないでよ」



……耳を疑った。


確かにそれは、未風玲夜、正真正銘私の彼氏の声だったけれど…


…そっか、そうなんだね。

玲夜くんは私のこと、可愛いなんて少しも思ってないし、私なんて、無駄な存在なんだね。


最初から、分かってたことじゃん。

彼にとって、私なんてちょっとした遊びに過ぎないんだって。


なんで、なんで彼は私に優しくなんてしてきたんだろう。

……酷い、なぁ。


ジワジワと滲んできた涙が大粒になったとき、私はいてもたってもいられなくてそのままもう帰ることにした。


夢みたいな彼との時間を続けるには、私の心が持たない。

いつまで彼はこんな遊びをする気なのかわからないけれど、もう、私決めたんだ。


明日、彼と、別れようって。

今まで夢を見させてくれてありがとう。

でももう、あなたのことが分からないですって。


家に帰って、

泣きながらベッドに潜って、

通知がうるさいからスマホも切ってしまった。

彼からの連絡みたいだけど、今更そんなのどうでもいい。

結局、住む世界が違う人とは交わらないんだ。


元の、私の世界に戻るだけ。