メイクをして、学校に着いて、
クラスの友達はみんな、
『莉都!超可愛いじゃん!』と褒めてくれて、すごく嬉しかった。
そろそろ彼の委員会の集まりが終わるはず。
そうしたら彼は私のクラスに寄ってくれるはずだから…。
そうワクワクして待っていると、
廊下が少し賑やかになった。
玲夜くんが通るときはみんな思わず声をあげてしまうから、きっと彼が来たんだな。
そう思って廊下のほうを見ると、思っていた通り彼と目が合った。
どうやら彼は私のメイクに気づいたらしく少し目を見開いて、
…でも、次の瞬間、彼の目に冷たさが宿った。
…なんで、どうして?
そう驚いている間に彼はもう私の目の前まで来ていて、
「…莉都ちゃん、来て」
私の腕を掴んで強引に立たせ、彼はそのまま空き教室まで私を連れていった。
私を教室の中に入れると、扉を勢いよく閉めて、
私を壁際へジリジリと追い込んでいった。
トン、と彼が腕を壁につけて、
その美しい顔が間近になった。
その瞳には、いつも優しい彼が想像も出来ないくらいに冷たい光が宿っている。
「…ねぇ、莉都ちゃん、僕ずっとそのままの君で可愛いよって言ってたよね?」
確認するかのように聞きながら、その答えはYESしか求めていない、彼の言葉。
私は必死になって、頷いた。
そんな私を見て、彼はさらにその冷たさをどんどんと増しながら、
その綺麗な指先で私の顎を持ち上げて、強制的に彼と目を合わせられた。
「なのにメイクするってことは、僕以外に可愛く見られたい相手でもいるの?」
絶対零度。そのくらいに、彼は私を冷たく見ていて、
次の瞬間、
気づいたら彼に甘く唇を奪われていた。
目を開けた彼は至近距離で私を睨んで、
「…なんでメイクしたのか、僕に教えてよ」
そうやって言うから、正直に言おうって思って、
彼を見つめながら、
「れ、玲夜くんに、可愛いって思ってほしくて…」
そう伝えた瞬間、
彼はすぐに手で自分の口を抑えて反対側を見て、
「…可愛いって、毎日思ってるんだからさ、そんな可愛くなりすぎないでよ」
耳を赤くしながら言う彼の方が、
可愛く見えて仕方がなかった。