次の日、
一緒に学校に行こうと約束したから、待ち合わせの10分前に家を出た。
なのに…、
もうすでに彼はは私の家の前で待ってくれていたんだ。
「莉都ちゃん、おはよう」
私が出てきたのに気づいて、誰もが卒倒するほどの甘い微笑みで挨拶してくれた、けれど。
「…玲夜くん、おはよう。ねぇ、玲夜くんは時間通りに来てくれたら良いからね?」
私如きに、そんなに優しくしなくて良いんだよ、そんな思いで言ったけれど。
彼は少し困ったように笑って、
「だめだよ、莉都ちゃんを待たせるなんて絶対できない」
そう言って、優しく私の手を取って繋いで、
「お試しとはいえ彼氏なんだから、優しくさせてよ」
そう言って、微笑んで、歩き出した。
学校に行くまでの間、彼との話はとても盛り上がって、この人は本当に完璧な王子様なんだなって実感した。
周りを通る人全てが、彼の美しさに目を奪われている。
そんな姿を見て、私は何度だって自分に言い聞かせるんだ。
この美しい人は、何かの間違いで私に告白してきたんだ。
だから、きっとすぐに見放される。
好きにならないなんて不可能だけど、せめて元に戻れる場所で好きでいようって。
そう、分かってるはずなのに…。
「じゃあね、莉都ちゃん」
お互いのクラスを離れるときに心底寂しそうに見つめる目とか、
「可愛いね」
すれ違うときに、耳元で囁いてくるその甘い悪戯とか。
「僕、本当に莉都ちゃんのこと好きだよ」
真っ直ぐに愛を、伝えてくれるところとか。
全部、全部、好きで、堪らなくて。
そんなに女の子扱いされたことなんて無かったから、気がつけば舞い上がっていた。
『彼に、可愛く見られたい。』
そんな思いが、日に日に強くなって言った。
玲夜くんは私に言い聞かせるように、
『君はそのままで可愛いよ』って言ってくれるけれど、もちろんそれは彼の優しさ。
私が何をしたって美少女にはなれないってもちろん分かってるけど、
ほんの少しくらい、可愛く見られたいなって思ってメイクの勉強を始めた。
彼が委員会の集まりで先に学校に行く、という日に、
「今日、メイクして行こうかな」
彼には内緒で、学校にメイクをしていくことにした。
学校で会ったら、驚いて、『可愛い』って言ってくれないかなって、そんな淡い期待を込めて。