「十環先輩が卒業する、あと半月だけ」


「桃ちゃん? 
 言っている意味が……」


「今のまま卒業したら
 高校の思い出は結愛さんだらけに
 なりますよね?

 結愛さんとここで勉強したなとか
 お昼食べたなとか。
 その結愛さんとの思い出を
 私が塗り替えます」


 なんてことを言っているんだと
 心臓バクバクの私。


 でもこれは
 十環先輩のためだけじゃない。


 十環先輩の好きなタイプと正反対の私が
 先輩の卒業まで一緒にいられるための
 唯一の方法。


「桃ちゃん……ごめん」


「私のこと、利用してください。
 結愛さんを忘れるために。

 十環先輩が卒業したら彼女カッコ仮は
 自然消滅ということで、どうですか?」


「桃ちゃん、なんで?
 なんで俺に協力してくれるの?」


 それは………
 好きだから……
 
 せめて十環先輩が卒業するまで……
 一番近くにいたいから……


 そんな素直な思いなんて
 十環先輩に伝える勇気なんてない。


 だって十環先輩の中には
 私なんて1ミリもいないでしょ?

 結愛さんって人のことで
 頭の中がいっぱいなんでしょ?