あ……あそこだ。


 ベンチを取り囲むように
 群がる女の子たちを発見。


 きっと女子たちの視線の先には
 十環先輩がいると思うけど……


 甘い声を発する女子たちが
 群がりすぎていて、
 十環先輩を見ることさえできない。



「十環くん
 バレンタインチョコ受け取って」 


「私のも」


 ここにいる女子たち…… 

 全員が私のライバルだ。



 私も早く十環先輩のところまで行って
 この紙袋を手渡さなきゃ。


 そう思ったのに……



 耳を優しく撫でるような
 十環先輩の甘い声が
 離れている私の耳にも届き
 一瞬で凍り付かせた。


「ごめんね、みんな。

 俺、バレンタインは
 誰からも受け取らないことにしたんだ」


 え? 

 受け取ってさえもらえない?



 ラブレター入りの紙袋を
 ギュッと抱きしめる私。


「十環くん、なんで? 

 去年は貰ってくれたじゃん」


「そうだよ」


 女子たちの涙交じりの声。


「俺実は……甘いものが嫌いなんだ。
 今まで黙っていて、ごめんね。

 それにバレンタインは
 大好きな子だけにもらいたいから」


「十環くんって、彼女いないよね?」


「うん」


「じゃあどんな人が
 タイプなんですか?」



 十環先輩を取り巻く女子たち
 ナイスな質問!!



 だって、私も知りたいもん。


 女子に大人気の十環先輩が
 どんな女の子にトキメクのか。