「龍兄、知ってたの?
 私がやろうとしたこと」


「ああ」


「なんでわかったの?」


「昨日のお前さ
 明らかに態度がおかしかったから。
 なんか心配になって……

 忍者の術を駆使して……
 天井に張り付いたり……
 隠れみの術で……」


 オイオイ。
 それって悪質なストーカーじゃん。


 いや
 ストーカーよりたちが悪すぎ。


 忍者が好きすぎて
 日々忍者修行までしている龍兄は
 自分の気配を消す術も身に着けている。


 もしかして……


 私の部屋とか……
 トイレとか……
 お風呂まで???


 私は龍兄の机の上に置いてあった
 木製の写真立てを手に取ると
 怒りの感情とともに
 思いっきり龍兄に投げつけた。


「なんだよ、いきなり!」


 至近距離にもかかわらず、
 写真たてをキャッチした龍兄。


「私の知らないところで、
 勝手に私の生活をのぞき見しないで!!
 本当に許せない!! 
 私の部屋とか、お風呂とか!!」


「は? 
 桃の部屋に
 俺が勝手に入るわけないだろ?

 それにお風呂ってなんだよ。
 妹のお風呂を覗くなんて
 そんなこと、死んでもしねえし」


「トイレは?」


「は~、桃の中の俺って
 どんな奴なんだよ。

 やっていいことと悪いことの
 区別ぐらいつくし」


「天井に張り付いて
 私のこと見てた時点で、
 悪いことだからね。

 普通のお兄ちゃんは
 そんなことしないからね」


 龍兄は穏やかな顔で私に近寄ると
 私の頭をポンポンとした。


 そして私が投げた写真盾を
 机の上に戻した。


 写真には
 TODOROKIメンバーが映っていて
 水色の髪をした十環先輩も
 とびきりの笑顔で写っている。


 その笑顔を見たとたん
 私の胸に痛みが走った。