「痛い!」


 十環先輩の拳がめり込んだお腹に
 激痛が走る。


「桃華さん、
 まだ横になっていてください」


「そんなことよりもトイプー
 大丈夫だった?」


「え?」


「私が倒れて意識がなくなった後
 十環先輩に襲われなかった?」


 あの時の十環先輩は
 私たちのことを完全に敵だと認識して
 本気で殴りかかってきた。


 私が倒れた後
 トイプーに手を出さないはずがない。


 さっきトイプーが泣いていたのは
 どこかが痛いからなのかも。


 私の心配をよそに
 トイプーは私を安心させるような
 穏やかな笑顔を向けた。


「大丈夫です。
 龍牙さんが、助けに来てくれましたから」


「え? 龍兄が?」


「はい。

 桃華さんが倒れた後、
 覆面をかぶった龍牙さんが
 桃華さんを肩に担いで
 一緒に逃げてくれました。

 だから、桃華さんの計画は
 完璧でしたよ」


「龍兄、気づいていたんだ。
 私がこんな無茶をするって」


「そうみたいですね」