「トイプー、心配かけて悪かったな」


「僕が弱っちいせいで
 桃華さんが殴られちゃうし。僕……」


「だから、トイプーのせいじゃないから。

 私が思っている以上に
 十環先輩が強くて
 腹にパンチをもらっちゃっただけ。

 私の計画ミスだから。本当に悪かったな。
 こんな危険なことに
 トイプーを巻き込んじゃってさ」

 まだ泣き止む気配がないトイプー。

 ずっとうつむきながら
 肩をヒックヒック上下させている。


「トイプー、泣き止んで。
 あ、1枚あげようか?

 『泣きたいときには
 僕のところに来てください券』」


 私の言葉を聞いて、
 トイプーは涙目のまま
 反抗的な瞳を私に向けた。


「その券、バレンタインに
 僕があげたものじゃないですか?」


 口を尖らせながらも
 少し笑みを見せたトイプーに
 ちょっと安心した。


 その安心感と一緒にやってきた疑問。


 あれ? 

 私って、十環先輩に頬を殴られて
 そこから意識がないんだよね?

 どうして今
 ここで寝ているんだっけ?


 そのハテナに
 私はガバっと体を起こした。