その時、私に
 あるアイディアが降りてきた。


 でも、こんなことしちゃったら……

 私の家族に
 迷惑をかけちゃうかな……


 そう思った時には
 着物売り場側のレジの前に座っている
 お母さんのところに
 勝手に足が向かっていた。



「お母さん……
 私が警察に捕まったら、困るよね?」


「は? 
 いきなり何よ。

 あんたたちには
 子供の頃から言ってきたでしょ!
 警察の世話になんて、絶対になるなって」


「言われ続けてきたけど……」


「桃、あんた何をやらかす気?
 まさか暴行?
 流血騒ぎとか辞めてよね」


「暴行なんてしないよ。
 絶対に、手は出さないし」


「何をするつもりか、ちゃんと言って」


「嫌」


「言わなくちゃ、わからないでしょ」


「絶対に、言いたくない」


「桃!
  あんた、自分で何を言っているか
 わかってんの?
 言わないなら
 いますぐこの家から出ていきな!」


 お母さんが
 鬼婆のように目を吊り上げて
 声を張り上げてた。


 元レディースの総長だった母。

 怒りだしたら
 手が付けられないくらい恐ろしい。


 でも今は
 いくらお母さんに怒鳴られようが
 絶対に言いたくない。


 だって、もう決めたんだから。

 私は絶対に、実行するって。