白雪姫に極甘な毒リンゴを 3 (桃華の初恋編)



「中3の時
 一颯とこの高校に潜入したって
 話をしたでしょ?

 その時に
 ここで結愛さんと出会ったんだ。
 一颯は学園長室に行っている
 時だったんだけどね。

 俺は階段の下にいたら
 上からキャラメルが転がってきて」


「キャラメル?」


 桃ちゃんが『キャラメル』という言葉に
 大げさに反応した気がした。

 でもそのまま、俺は話し続けた。


「そう、キャラメル。
 だから階段をのぼったら
 踊り場を曲がったその先で
 結愛さんが座って寝ていたの。

 そしたらいきなり
 倒れそうになったから、俺が支えた。
 そんな感じかな」


「結愛さんって、どんな人なんですか?
 写真とかないんですか?」


「あるにはあるけど……」


「見たいな、私」


 桃ちゃんに言われるまま
 俺はスマホに入っている写真を見せた。

 結愛さんと二人で並んで
 とびきりの笑顔をしている写真を。


「結愛さんって
 綺麗とかわいさ、
 両方兼ね備えているって感じの
 人ですね」


「そうだね」


「なんで二人とも
 手にキャラメルを持って
 写真に写っているんですか?」


「結愛さんが
 キャラメルが大好きだったから。

 俺はさ、
 もともと甘いものが好きじゃないから
 キャラメルなんて食べたこと
 なかったんだけど。
 結愛さんにもらって食べてみたら
 好きになったんだ。

 俺が結愛さんに告白した時も
 キャラメルに思いを込めたしね」


「結愛さんも十環先輩も
 髪の色がキャラメル色ですね。
 おそろいかぁ。 ちょっと憧れるなぁ」


「桃ちゃんには
 トイくんがいるでしょ?」


「トイですか?
 だからあいつは、下僕なだけで」


「でもさ、桃ちゃんにとっても
 特別なんじゃないの?

 桃ちゃんって
 トイくんの話をするときには
 優しい表情になるでしょ?
 自分で気づいてた?」


「そんなことは……」


「それにバレンタインの日に
 お店でトイくんに言ってたでしょ?

 トイ君にしか情けない自分を
 さらけだせないとか、
 弱さを見せられないって。

 特別なんだよ。
 桃ちゃんにとってトイくんは」


 そのまま黙ってしまった桃ちゃん。

 俺も
 何を桃ちゃんに言っているんだろう。


 桃ちゃんの中で
 トイくんが特別ってことに
 何が引っかかってしまうんだろう。


 そんな重苦しい空気の中
 俺のスマホが震えだした。