峡side

俺と奈織は、実は中学のときに会ってる。
というか、結構長い間。

同じ塾だったから。

奈織は俺の存在に気づいてなかったけど、

俺はガッツリ奈織のことを知ってた。

熱心に勉強してるところから、なんか惹かれてて。

俺が塾の模試で1位を取って貼り出されてたとき、偶然にも奈織が

「この1位の人すごいね、頭良いんだー」

と友達に何気なく言った言葉を聞いたとき、

『この人』じゃなくて、『峡』って、俺の名前を知って呼んで欲しいって思った。

そこから、俺のなかなかに長い片思いが幕を開けた。


ここら辺の人間で頭のレベルが高い奴らが大体行く高校は決まってるから、同じ高校に行くのは簡単なことだった。

それで、運良く同じクラスになって、運良く隣の席になって。

チャンスだと思った。

とことん優しくしようと、心掛けた。

そうしたら、神は俺の味方だったらしく。

やべぇクラス離れるし告ろうかなと思っていた3月、照れながら告ってくる超可愛い物体…もとい奈織と付き合うことに成功した。

それで超浮かれたけど、もちろん付き合ったからって相手の行動を制限できるわけじゃない。

奈織のクラスを覗いたときに、他の男子が奈織と話してるのを見たら

俺の奈織と話すんじゃねぇ

と、怒鳴り散らしてやろうかと考えたし、

奈織に少しでも冷たくされると、

やべぇ、俺嫌われた?

と、相当焦った。

俺はこんな調子でめっちゃ好きなのに、
奈織はそんな感じが一切無くて。

思わず、冷たくなったり、無視したり、するようになってたらしい。
ごめんけど、そのときは全く気づいてなかった。

だから、

奈織が他の男子に、

「もう飽きられてるから」

「もう別れる予定」

そう話してるのを聞いたとき、

とてもじゃねぇけど、怒りが収まらなかった。

こんなに俺は好きなのに、飽きてるのは奈織のほうじゃねぇの?

俺は、一切別れるつもりねぇよ?

その怒りのままに奈織にキレたけど、どうやら俺の方が酷いことをしていたらしい。

…まじごめん。

でも、別れなくて良かったと、本当に思う。

だって、超好きだから。

でもなー。


いつか、妬いてくんねぇかなー。