「ねぇ、峡くん?」
あの日以来、「一緒に帰りたいなー」とか言うと、帰ってくれるようになった。
そんなこんなで、今日も一緒に帰っている。
「何」
相変わらず、ぶっきらぼうなところもあるけど。
「峡くんって、ずっと好きな人がいたのに、なんで私のこと好きになったの?」
私がただの疑問からそう聞くと、彼は即座に私のほうを向いて、
「…妬いてる?」
と、嫉妬してるかチェックしてきた。
「いや、別にそうじゃないけど」
そう返すとあからさまにテンションを落として、
「じゃあ答えねぇ」
とか、面倒なことを言ってきたので、
「…過去の峡くんに私以外に好きな人いたなんて嫌だなー」
と半分棒読みで言うと、
それでもなんか少し嬉しそうにして、
「…へぇ。まぁ、俺が初めて好きになったの、奈織だけど」
急な奈織呼びにびっくりしてドキドキしてしまったからそのときは気がつかなかったけれど、
そういえば私の前に好きな人がいたはずなのに、なんで初恋が私なんだ…?



