え、だって彼にはずっと好きな人がいるはずじゃ…。
とか色々と考えそうになって、いや、こんな人が私を好きになってくれるなんてチャンス、もう人生で二度と来ないぞ、と気づいた。
理由は分からないけれど、彼は私を好きだと言った。
だったら、彼が『やっぱ好きじゃないわ』と目を覚ますそのときまでは、彼女でいさせてほしい。
そんな思いで、私は峡くんと付き合い始めた。
だけど、ただいま高校2年生の夏終わり、付き合い始めて半年が経過。
…峡くんは、いつかの優しさなんて少しも留めていない。
例えば昨日。
付き合い初めてちょうど半年記念日だった。
別に、何か欲しいとかそんなのは無いから、ただ一緒に帰りたいなって思って、彼のクラスまで行った。
『峡くん』
帰ろうと荷物を詰めてるらしい彼に声をかけると、私だと気付いた瞬間目を見開いてすぐに睨んで、
『何』
そう、一言。
こんな悲しいことにも慣れてしまった私は、
『一緒に帰れない?』
変わらぬその調子のままに、そう尋ねた。
私の問いかけに、彼は無表情のまま何も答えず、
なんとそのまま同じクラスの女子のほうを見やって、
『彩音、明日提出の課題って英語だけ?』
とか、唐突に確認し出した。
…あぁ。
…あぁ、もう終わったんだなって、そう思った。
半年の記念日を覚えていてなんて言わないし、優しくしてなんて頼まない。
それでも、
話しかけたときに嫌な顔されたくない、無視されたくもない。
私のこと名前で呼ばないのに、他の女の子のことは下の名前で…呼ぶんだね。
私のこと好きじゃないなら、言ってくれたら良いのに、なんで、言ってくれないんだろう。
彼は、残酷だと思う。
告白にYESとは言ったのに、
私へのNOは察しろと言うんだ。
もう、終わってたんだって分かってるけど、私としては区切りが欲しいから、別れをちゃんと言おうって、そのときに決心した。



