高校1年生、隣の席になったあなたに、恋をした。
まるで天からの授かり物。
漆黒の髪に、漆黒の瞳。一見冷たそうに見えるほど綺麗で大人びた容姿。
それも、確かに好きだけれど。
私が風邪で休んだ次の日、彼は一冊のノートを差し出して、
『…昨日、やったところまとめたけど、いらないなら別に見なくていい』
そう言って貸してくれた。
私が黒板を消すとき、いつの間にかそばに来て高いところを消してくれたし、
難しい数学の問題の解き方を教えてくれたこともあった。
冷たそうな雰囲気とは違って優しい彼の内面に、どんどん惹かれていく自分がいた。
それでも彼は、みんなが振り返るほどかっこいい人。私が足元にも及ばない、素敵な人。
彼がたくさんの女の子に告白されるのを見てきた。
それでも、彼はいつだって断っていて。
聞くところによると、ずっと好きな人がいるらしい。
当たり前だけど、その相手は私なんかじゃない。高校になって初めて会った私と彼の間に『ずっと』なんて無いし、そもそも好いてもらえるようなスペックでも無いし。
きっと、相手はとんでもなく美人で、とんでもなく頭も良い、とんでもなく凄い人なんだろうな。
…私なんて、出る幕は無いよね。
それは、もちろん分かってる。
分かってて、私は、
それでも彼に告白すると決めた、3月。
高2になれば文系理系でクラスが離れて、
文系の私と理系の彼は、接点を持たなくなる。
だとしたら。
告白して、フラれて。
別に何も、怖がることなんてない。
元々私たちは交わらない世界に生きてるんだから、思い出として告白くらいさせてほしい。
それで、フラれて、次の恋を探すんだ。
そう思って、修了式の日の合間の時間に、
『好きです』
たった4文字を、伝えた。
私はその言葉に、”ごめん”の3文字が返ってくるものだと、そう思っていた。
なのに、返ってきたのは、違う言葉。
『俺も、好き』
目を見開くどころじゃ済まなかった。
学年が噂する、もしかしたら学校の中でも有名人かもしれない彼が、
私のことを、好き…?