そんなカルミアの期待を裏切るようにレインは小声で呟いた。

「でもこれ、多分しばらく寝込むと思います……」

「それ大丈夫なの!?」

「だ、大丈夫、大丈夫です! 本当に、寝込むだけなんです。材料には食用の安全なものしか使っていませんから、本当です誓って! だから効果も一週間しか持たないんです!」

 レインはカルミアの怒りを買うまいと必死に弁解する。

「なら、安静にしておけばいいのね?」

 音が鳴るほど激しく首を振って答えていた。

「ところで学園の方はどうなったんですか? レインさんがここにいるってことは、みんなも無事?」

「カルミアが率先して動いてくれたから混乱は少なかったって、オランヌ先生とオズが話していました。怪我人も出ていないし、校舎にも大きな被害はないです。学園は臨時休校で、先生たちは事態の収束に追われていますけど……」

「そう、みんな無事で良かった」

 無事で済まなかったのは現在カルミアの腕の中にいる人だろう。
 カルミアの視線に気付いたレインは慌てて立ち上がる。

「私、人を呼んできます!」

「助かります」

 ここにいる人物たちで運ぶのは難しい。レインの言う通り安静に寝かせるためにも人の手が必要だ。
 二人きりになったところでドローナがある提案をした。

「カルミア。あとのことは私に任せなさい」

「あとのこと?」

 どういう意味かと頼もしい表情を浮かべるドローナに説明を求める。
 しかし数秒もしないうちにオランヌを連れたレインが戻ってきたことで訊きそびれしまった。よほど急いでくれたのだろう。二人とも息をきらしていた。

「リシャールが倒れてるって聞いたけど、どうしたの!?」

 どこまで話せばいいのか、カルミアは瞬時に物語のシナリオを要求される。ところがこれにはドローナが口をはさんだ。

「今回のことは精霊の仕業だったのよ。カルミアとリシャールが身体を張って食い止めてくれたってわけ。リシャールはこの有り様だけどね」

「そうだったの!?」

 オランヌは驚くが、カルミアもまた「そうだったの!?」と危うく口を滑らせるところだった。ドローナはリシャールが守ろうとしたものを察し、そのためのシナリオを用意してくれたのだ。