「大丈夫か、あんた……」



ふゆくんは、優しい声でそう言って、私の顔を覗き込んでくる。

昔と変わらないその声色に、ずっと我慢していた涙が溢れ出した。



「ふゆ、くん……」

「……っ、え?」



ふゆくんがなぜか、ひどく動揺したような声を出す。

よかった……ふゆくんだけでも、変わらないでいてくれて……。

ふゆくんは、ずっとそのままでいてねっ……。



「ちょっと……!」



引き止めるふゆくんの声を背に、私は教室を飛び出した。

とにかくひとりになりたくて、無我夢中で走った。

走って走って走って……気づけば、昨日南くんと話した生徒会寮の裏庭に来ていた。

ここなら、きっと誰もいない……。

ここにくるまでも、幸い知った人には合わなかった。

本当は自分の部屋に戻りたいけど、途中で誰かに会いたくない。
こんな情けない顔……誰にも、見られたくないっ……。