「あ、あれ、拓ちゃん?」



偶然を繕い、名前を呼ぶ。



「由姫!」



拓ちゃんは私を見るなり顔をぱあっと明るくさせ、駆け寄って来た。



「どうしたの、こんなところで」

「由姫のこと待ってた」

「そ、そうだったんだ、ありがとう……!」



もしそのまま学校に行ってたら、拓ちゃんに疑われてたかもしれない。

さっき話していた女の子たちに、心の中で感謝する。

それにしても、いったいいつから待っていてくれたんだろう?



「風邪、もう平気なのか?」



心配そうに顔を覗き込んでくる拓ちゃんに、笑顔を返す。