大地は私の方を見た。

「さくら、まだコンノに言いたい事があんだろ」

「……えっと」

 私は、玄関を背に立つ紺野君を見た。

「私、急にみんなで会えなくなったから、その…寂しくて」

 紺野君は頷き、笑ってくれた。

「僕も。またみんなで会える日が来るといいね」

 副委員長をしてくれた紺野君は、いつだって真面目で、とても優しかった。

「いつも本を貸してもらってたのに連絡先知らなくて。…良かったら」

「今、連絡先教えるよ」

 紺野君はスマホを取り出し、私と連絡先を交換した。

「この本、シリーズの1作目なんだ。続きを貸してあげるから、読み終わったら連絡して。急がなくていいから」

 私は嬉しくなって頷いた。

「ありがとう」

「うん。別々の大学になっちゃうけど、時々情報交換しようよ。凌太達とも会いたいし」

 大地は急に紺野君と私の手を取り、強引に握手をさせた。


「……!」


「……?!」


「なんか、こういうのが足りないんだろ?お前ら」

 紺野君と繋いだ手をじっと見る。

「確かに、そうかも」

 紺野君は照れた様に頷き、少し話をしてから本の続きを持って来てくれた。

 ウイルスの感染が怖い状況下、友達と会って握手をする大切さなど、すっかり忘れていた。



「またいつか、みんなで集まろうね」



 私は紺野君に改めてお礼を言って、彼の家を後にした。