いよいよ、フィナ-レ。両家代表で謝辞を述べる為に、マイクを握ったお義父さんは
「新郎の父でございます。本日は・・・感無量、こんなに嬉しい日はございません。」
と言ったところで、号泣。あとは、辛うじて
「本日は、ありがとうございました。」
と言うのが精一杯。用意していた言葉を、ほとんど言えないまま、新郎の挨拶となった。
「本日はご多忙の中、またお寒い中、僕達の為に、ご列席を賜りまして、誠にありがとうございました。皆様から、身に余るようなたくさんのご祝福をいただき、光栄に存ずると共に、今、人生27年の中で、初めて父親の涙を見ました。今日の日は、生涯忘れることはないと思います。」
そっか・・・そうだよね。
「これは母親から聞いた話ですが、今から27年前、生後3ヶ月の僕を初めて、恐る恐る近くの公園に連れて行った時、笑顔で母を迎え入れてくれたのが、岩武のお義母さんでした。そしてその時、お義母さんの腕の中に抱かれていた、僕より1ヶ月前に生まれた女の子と僕は、初めて出会ったんです。今となっては、証明することは出来ませんが、間違いなく僕はその時に、その子に、心奪われたんです。」
(聡志・・・。)
「以来、今日まで、その子はずっと僕の心の中にいます。ひと時も、彼女が、僕の中から消えたことはありません。これは断言、出来ます。」
そう言い切った聡志の顔を、私はそっと見つめる。
「でも僕と、その子の仲は、順調じゃありませんでした。理由は僕が子供だったから、僕が未熟だったから、僕が本当に彼女にふさわしい男なのか、自信が持てなかったから・・・残念ながら、原因のほとんどが僕にありました。」
そんなこと・・・ないよ。私は思わず、そっと首を振るけど、聡志は続ける。
「昨年、僕はまたやらかしてしまいました。彼女の本心を誤解し、彼女と一緒に歩む自信を失い、彼女を突き放しました。それでも彼女は、戻って来て、僕を許してくれました。その時、彼女はこう言ったんです。『私の夢は聡志、聡志と一緒にいること。それ以上の夢なんて、私にはない。』って。」
うわ、それ今ここで言う?すごく恥ずかしいんだけど・・・。
「僕もずっとそう思ってました。なのに、彼女のように、それを口にする勇気がありませんでした。そして、僕は誓いました。もう自分の気持ちに嘘は付かない、自分の気持ちを胡麻化さない、自分の気持ちを照れて、隠すことなんて、もう絶対にしないって。」
そう言って、チラッと私を見た後、聡志は続けた。
「僕は今、ここでみなさんにお誓いします。僕は由夏を、もう絶対に離しません。一生、何があっても、どんな時でも、由夏を守ります。そして、由夏を必ず幸せにします。例え、自分の命に代えてでも・・・。そして、みなさんには、これからも是非、この僕の誓いを見守っていただければと思います。本日は本当にありがとうございました。」
そう言って一礼した聡志に
「あのう・・・。」
と思わず声を掛けてしまった。えっという表情になった聡志から、マイクを受け取ると
「お気持ちは、とっても嬉しいんだけど、あの・・・いなくなられちゃ困るんで・・・。」
「由夏・・・。」
「だから、いなくならない程度に、よろしくお願いします。」
と言うと、ポカンとする聡志を尻目に、会場は拍手と爆笑に包まれた。そんな中、司会者が閉宴の言葉を述べ、披露宴は異例の幕引きとなった。
「参った、完全に一本取られた・・・。」
ゲストのお見送りの為に移動しながら、ポツンという聡志に
「ごめんね。でもいなくなられたら本当に困るし。」
と私。
「確かにな。披露宴で不穏当な発言をしちゃったよ。俺が悪い。」
「ううん、でも気持ちは嬉しかったよ。」
そう言って、微笑み合う私達。
「俺達らしい、終わり方かもしれない。」
「そうかもね。」
「なぁ、由夏。」
「うん?」
「今までありがとう、そしてこれからも・・・一生よろしくな。」
「はい。」
そう言って、頷き合った私達は、並んで、ゲストを待つ。
隣に聡志がいてくれることが、聡志の横にいられることが・・・幸せだった。
END
「新郎の父でございます。本日は・・・感無量、こんなに嬉しい日はございません。」
と言ったところで、号泣。あとは、辛うじて
「本日は、ありがとうございました。」
と言うのが精一杯。用意していた言葉を、ほとんど言えないまま、新郎の挨拶となった。
「本日はご多忙の中、またお寒い中、僕達の為に、ご列席を賜りまして、誠にありがとうございました。皆様から、身に余るようなたくさんのご祝福をいただき、光栄に存ずると共に、今、人生27年の中で、初めて父親の涙を見ました。今日の日は、生涯忘れることはないと思います。」
そっか・・・そうだよね。
「これは母親から聞いた話ですが、今から27年前、生後3ヶ月の僕を初めて、恐る恐る近くの公園に連れて行った時、笑顔で母を迎え入れてくれたのが、岩武のお義母さんでした。そしてその時、お義母さんの腕の中に抱かれていた、僕より1ヶ月前に生まれた女の子と僕は、初めて出会ったんです。今となっては、証明することは出来ませんが、間違いなく僕はその時に、その子に、心奪われたんです。」
(聡志・・・。)
「以来、今日まで、その子はずっと僕の心の中にいます。ひと時も、彼女が、僕の中から消えたことはありません。これは断言、出来ます。」
そう言い切った聡志の顔を、私はそっと見つめる。
「でも僕と、その子の仲は、順調じゃありませんでした。理由は僕が子供だったから、僕が未熟だったから、僕が本当に彼女にふさわしい男なのか、自信が持てなかったから・・・残念ながら、原因のほとんどが僕にありました。」
そんなこと・・・ないよ。私は思わず、そっと首を振るけど、聡志は続ける。
「昨年、僕はまたやらかしてしまいました。彼女の本心を誤解し、彼女と一緒に歩む自信を失い、彼女を突き放しました。それでも彼女は、戻って来て、僕を許してくれました。その時、彼女はこう言ったんです。『私の夢は聡志、聡志と一緒にいること。それ以上の夢なんて、私にはない。』って。」
うわ、それ今ここで言う?すごく恥ずかしいんだけど・・・。
「僕もずっとそう思ってました。なのに、彼女のように、それを口にする勇気がありませんでした。そして、僕は誓いました。もう自分の気持ちに嘘は付かない、自分の気持ちを胡麻化さない、自分の気持ちを照れて、隠すことなんて、もう絶対にしないって。」
そう言って、チラッと私を見た後、聡志は続けた。
「僕は今、ここでみなさんにお誓いします。僕は由夏を、もう絶対に離しません。一生、何があっても、どんな時でも、由夏を守ります。そして、由夏を必ず幸せにします。例え、自分の命に代えてでも・・・。そして、みなさんには、これからも是非、この僕の誓いを見守っていただければと思います。本日は本当にありがとうございました。」
そう言って一礼した聡志に
「あのう・・・。」
と思わず声を掛けてしまった。えっという表情になった聡志から、マイクを受け取ると
「お気持ちは、とっても嬉しいんだけど、あの・・・いなくなられちゃ困るんで・・・。」
「由夏・・・。」
「だから、いなくならない程度に、よろしくお願いします。」
と言うと、ポカンとする聡志を尻目に、会場は拍手と爆笑に包まれた。そんな中、司会者が閉宴の言葉を述べ、披露宴は異例の幕引きとなった。
「参った、完全に一本取られた・・・。」
ゲストのお見送りの為に移動しながら、ポツンという聡志に
「ごめんね。でもいなくなられたら本当に困るし。」
と私。
「確かにな。披露宴で不穏当な発言をしちゃったよ。俺が悪い。」
「ううん、でも気持ちは嬉しかったよ。」
そう言って、微笑み合う私達。
「俺達らしい、終わり方かもしれない。」
「そうかもね。」
「なぁ、由夏。」
「うん?」
「今までありがとう、そしてこれからも・・・一生よろしくな。」
「はい。」
そう言って、頷き合った私達は、並んで、ゲストを待つ。
隣に聡志がいてくれることが、聡志の横にいられることが・・・幸せだった。
END


