アイツらが出て行ったあと、俺はたまらなくなって、由夏に電話を掛けた。日曜のこんな朝早い時間に、迷惑この上ないことくらいは、わかっていたが、ショップ店員になって、日曜は出勤のはずの由夏が起きていることを期待した。


だがやはり、携帯は繫がることはなかった。もう少し、常識的な時間に掛け直したら、今度は着拒されていた。


長谷川には掛けなかった、いや掛けられなかった。ひと月前、彼女が転勤して行く時


『この1年余り、あなたに付き纏って、迷惑掛けてごめんなさい。でもこれであなたの前に姿を現すことも、電話をすることもないから、安心して。だから、あなたも、もう私の存在なんか、忘れて下さい。お元気で、さようなら。』


と言い捨てられていたからだ。


練習はまだ続く。11月いっぱいは俺は球団に拘束されている身だ。勝手なことは出来ない。でも俺は決めた、今度の休日に神奈川に帰ろう。


そしてまず由夏とキチンと話をしよう。今度は俺が門前払いされて、塩を撒かれるかもしれないが、そんなの仕方がない。


俺は結局、由夏があの試合を見てくれてなかったことにショックを受けて、何も見えなくなっていたんだ。


あとは感情が赴くままに、暴走しただけ。由夏との仲をからかわれて、あいつを遠ざけた小3のあの時から、俺はひょっとしたら、何も成長してないのかもと思ったら、情けなくなった。


そしてもちろん、長谷川にも詫びなくてはいけない。とにかく、帰ろう、帰るしかない。いっそ、今から。一瞬そう思って、腰を浮かせかけたが、明日の練習に間に合うように戻るには、今日は仕事の由夏と話せる時間なんか結局は取れないだろうと思いとどまった。


そのあとも、一睡もしてないのに、睡魔などまるで感じず、俺はしばらく、いろんなことを考えていたが、疲れを感じ、ゴロとソファに横になった途端、眠りに落ちていた。


ハッと気付いた時には、陽は既に西に傾いていた。なぜか、虚しくなった。