桜が散ったら、君に99回目のキスを。

「さっきっていつ?」


「え?」


「俺、ずっと今まで学校に残ってたんだけど」


「………」


じゃあ幻だったというの。


それならいい。


全部全部、幻だったらいい。


これが夢だというのなら、何もなかったことにして、気付かないふりをしてしまいたかった。


「…鳴宮さん。さっき本当に俺に会った?」


「…うん」


この姿を、声を、ちゃんとこの身体で確かめた。


「それ、多分聖利(ひじり)だと思う」


聖利。


記憶を巡らせて、思い当たる。


「え?」


短く発した声が地面に落ちた。


「だって、相馬くんは聖利くんじゃ」


「双子なんだ。俺は渉利(わたり)


次は声がひとつも出なかった。


驚いた、なんてものじゃない。


緊張の糸がプツリと切れて、頭が回らなくなった。


ひとつずつ、パズルのピースを埋めていくように、相馬くんの声を反芻する。


そしてようやく相馬くんの言葉の意味を理解した瞬間、止まりかけていた涙がまた視界を滲ませた。