桜が散ったら、君に99回目のキスを。

「…大丈夫?」


東の空に群青が広がり始めた頃、不意に足の先を黒い影が覆った。


その声を辿るように伏せた睫毛をゆっくりと上げる。


「気分悪い?」


尋ねた声を、私は知っていた。


「なんで……」


掠れた言葉に、相馬くんは僅かに目を見開いた。


相馬くんを映す瞳から、雫が1粒、零れ落ちた。


「どうして…、誰だって、言って…」


出会った時と同じ言葉で。


変わらぬ声で。


どうしてここに、戻ってきたの。


「なんで泣いてんの」


相馬くんは私に手を伸ばして───逡巡したように手の内の空を握り潰した。


「なんでなんて言わないで。私はずっと相馬くんが…、でもさっき……っ」


届かなかった。


届けてはいけなかった。


やっとさよならを、決めたところなのに。